初めての車中泊と
ミヤマキリシマに染まる
くじゅう連山!
中岳で見つけた天空のオアシス


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6月中旬。 先週訪れた平治岳のピンクの余韻を胸に、今回は初めて「中岳往復コース」へと足を踏み入れました。

仕事終わりの高揚感のまま飛び出した、人生初の車中泊。そこで待ち受けていたのは、舐めていた山の冷気でした。けれど夜が明ければ——言葉を失うほどの朝焼けと、自然の悪戯(いたずら)としか思えないほど純粋なピンクに染まる星生山、そしてまるで異国のアルプスを思わせるコバルトブルーの「御池」が、私を待っていてくれました。

寒さ、ペース配分、思わぬトラブル。振り返ればこの一日に山がくれた教訓は、ぜんぶ7月の富士山登頂につながっていた気がします。そんな実り多きソロ登山の記録です。

旅の始まりは仕事終わりの決断!
初めての車中泊への挑戦

友人から「牧の戸峠の駐車場は20時頃でも7〜8割は埋まっているよ」と聞き、仕事終わりにそのまま車中泊をすることを決意しました。実はこれが私にとって初めての車中泊。期待と同時に、少しばかりの不安を抱えながらのスタートです。

大分の温泉選びは下調べが肝心!
「湯の森くす」でツルツル肌に

仕事を終えて買い物を済ませた後、まずは「湯の森 くす」へ立ち寄ることにしました。受付で支払いを済ませて大浴場へ向かうと、時間が遅かったこともあってか、先客は一人だけ。お湯はぬるめで、時間を忘れてずっと浸かっていられる心地よさです。つるつるした泉質で、お肌にもとても良さそう。シャワーやドライヤーも完備されているので、しっかり髪の毛も洗えます。 大分の温泉は、場所によってはシャワーがなかったり、石鹸類が使えなかったりすることもあるので、事前に調べてから行くのがおすすめですよ。

湯の森くすの温泉湯の森くすの大浴場

舐めていた山の寒さ!
エマージェンシーシートに救われた夜

温泉から牧の戸駐車場までは、車で50分ほどの距離です。22:00頃に到着すると、トイレ前の駐車場にはまだ2台分の空きがありました。 ヘッドランプを頼りにトイレへ行き、歯磨きを済ませて寝る準備を始めます。私の車はシートがフラットになるタイプですが、実際に横になってみるとシートの段差がどうしても気になります。これはやはり、専用のマットが必要だなと実感しました。

そして、夜空に広がる満天の星空を眺めながら眠りにつきます。 温泉でしっかり暖まっていたため、ほとんど寒さを感じませんでしたが、夜中になるとやはり山の夜は冷え込みます。「テント泊じゃないし、車内なら寒くないだろう」とすっかり舐めていました……。持ってきた服をすべて着込み、大判のヒートテック膝掛けを被ってもまだ寒いのです。 車の暖房をつけようかとも思いましたが、「まわりの迷惑になるのでは……」と気が引けます。それに、ガソリンを満タンにしてこなかったことも不安要素になり、結局、ザックに忍ばせていたエマージェンシーシートを引っ張り出してくるまって寝ることに。 まさか、こんなところで使う日が来るとは思ってもみませんでした。でも、これがとても暖かい! 7月には富士山への登山を控えているのですが、「やっぱり山を甘く見てはいけない、夜は寒いんだ」と改めて実感させられる、良い気づきになりました。

由布岳を望む最高の朝焼け

外がガヤガヤと賑やかになり始め、周りの皆さんも活動を開始したようです。寝不足の目をこすりながらトイレへ向かうと、そこには素晴らしい景色が広がっていました。 遠くに見えるあの2つのコブは、由布岳ですね。絵に描いたような見事な朝焼け。これを見られただけでも、車中泊をした甲斐があったというものです。

由布岳のシルエットと見事な朝焼け

登山前の朝ごはんには、「oikos(オイコス)」のヨーグルトと、「ランチパック」のたまごサンドをいただきます。最近よく耳にする「朝たん」——朝にタンパク質をとることですが、夜よりも朝に摂る方が筋肉がつきやすく、代謝も上がりやすいと言われています。日頃、自宅にいるときは豆乳や納豆などを取り入れていますが、手軽に食べられるオイコスのヨーグルトは、忙しい登山の朝にもぴったりです。

私は肌が弱いので、登る前には毎回ワセリンを塗るのがルーティンです。車内で着替えているときにふと気づいたのですが、「あれ?なんだかお肌がツルツルしてる……?」。年季の入った私の肌が、いつもと明らかに違うのです。これはきっと、昨晩入った温泉の効果ですね。

牧の戸峠のトイレと売店

ちなみに、牧の戸のトイレにはトイレットペーパーが置いてあります。無料で利用できるのはありがたいですね。売店もあり、開店時間は日によってまちまちのようですが、この日は朝の6:30にはすでに開いていました。

いよいよ出発!
きついコンクリート坂の先に
出会った可愛い花々

準備を整え、いよいよ出発です!登山口には登山計画書を提出するBOXがありますので、出し忘れることのないようご注意くださいね。

中岳の登山口登山計画書を提出するBOX

歩き始めて最初に続くこのコンクリートの急坂が、地味にきつくて体にこたえます。とにかく最初の30分くらいは、焦らずゆっくり、徹底してマイペースを保ちます。私の場合、ここで無理をしないことが、その日1日の山行の調子を決めると言っても過言ではありません。

登山口から続くコンクリートの急坂

コンクリートの急坂を登りきると、目の前には嬉しいご褒美が待っていました! タニウツギ、シロドウダン、ツクシドウダン。 どれも小さなシャンデリアが揺れているみたいで、本当に可愛らしい姿を見せてくれました♡

タニウツギの花シロドウダンの花ツクシドウダンの花

さらに進むと、阿蘇山や由布岳を一望することができます。どちらも特徴のある山容をしているので、私の目でもはっきりとその姿を確認することができました。

登山道から望む阿蘇山登山道から望む由布岳

3年間の歩みがくれた景色と、
ピンクに染まる星生山

ここからは、石がゴロゴロと転がった本格的な登山道を登っていきます。 しばらく登り進めると、左手に星生山(ほっしょうざん)が姿を現しました。 「ミヤマキリシマの時期にはもう遅いかな……」と半分諦めていたのですが、山頂付近に目をやると、自然が作り出したとは思えないほど、混じり気のない純粋なピンク色に染まっています!美しすぎて写真を撮る手が止まらず、かなりのスローペースになってしまいました。「急がなきゃ!」と思いつつも、ついつい見惚れてしまいます。

ピンクに染まる星生山のミヤマキリシマ星生山の山頂付近を彩るミヤマキリシマ

実は、中岳に登るのは今回が初めてのこと。初めて挑戦する山はどうしても不安の方が勝ってしまいがちですが、最近になって、ようやく純粋に景色を楽しめる心の余裕が出てきました。これも、3年間地道に山を歩き続けてきた成果だな、と自分の成長を少し嬉しく思います。

久住わかれ避難小屋での休息と、
大好きな三俣山の絶景

お腹もすいてきたので、先を急いで「久住わかれ避難小屋」へと向かいます。

久住わかれ避難小屋のトイレ

ここで持参したパンを食べながら、ひと足先に休憩をとることにしました。ここにはトイレも設置されています。利用料の100円を料金箱に入れる仕組みになっているので、山に入る前には小銭を多めに準備しておくのをおすすめします。

久住わかれ避難小屋久住わかれ避難小屋の周辺

休憩を終えて少し歩くと、私の大好きな三俣山(みまたやま)が雄大に見えてきました。 手前に広がる、荒々しい硫黄山の噴気地帯やダイナミックなカルデラ地形。そのすぐ奥に佇む、三俣山のなだらかで美しい山肌。この対比こそが、くじゅう連山の素晴らしい醍醐味です。自分の足で歩いてきた人だけが見下ろせる、まさに至高の絶景が広がっています。

硫黄山の噴気地帯と三俣山

この先に久住山と中岳の分かれ道がありますので、見落として通り過ぎないよう注意が必要です。

久住山と中岳の分かれ道の道標

そのまま歩いていると道標があり、他の登山者の皆さんも足を止めてその絶景を眺めていました。

道標から望むくじゅう連山の絶景

ここは、雨が降っても水がまったく溜まらず、そのまま地下へと抜けてしまうことから「空池(からいけ)」と名付けられた場所。ゴロゴロとした無数の岩が転がる険しいすり鉢状の地形を見れば、ここがかつての「火口の跡」であることがよく分かります。 とても珍しい風景で、灰色の無骨な岩肌を優しく包み込むように広がる、ミヤマキリシマのピンク色のドット模様がとても印象的でした。

火口跡の空池(からいけ)空池の岩肌に咲くミヤマキリシマ

感動の御池!
そして九州本土最高峰・中岳の頂へ

険しい岩場を一歩ずつ越え、ふと顔を上げた瞬間——息が止まりました。 眼下に、吸い込まれそうなほど深いコバルトブルーの水面。今回の山行で一番楽しみにしていた「御池(おいけ)」です。事前に写真で見てはいたけれど、本物はその何倍も鮮やかで、しばらく言葉が出ませんでした。

コバルトブルーに輝く御池とミヤマキリシマ

池のほとりは歩けるようになっており、私は行きには池を見下ろせる「上の道」を通り、帰りにはすぐ近くを歩ける「ほとりの道」を選びました。ほとりのルートは、雨上がりなどには増水して歩けなくなることもあるそうなので、行かれる際は十分気をつけてくださいね。

御池のほとりの道

いよいよ、九州本土最高峰である中岳の山頂を目指します。頂上に近づくにつれ、目の前に険しい崖が立ちはだかりました。これほど本格的な崖を登るのは初めてのこと。少し不安が頭をよぎりましたが、意を決してしっかりと足を上げ、崖をよじ登っていきます。 「下さえ見なければ怖くない!」と言い聞かせながら登りました。ふと横を見てみると、どうやら安全な回り道が別にあったようで、「帰りは絶対にそっちの道を使おう」と心に誓いました(笑)。

中岳山頂手前の険しい崖。よじ登るルート

辿り着いた山頂は、「おー、高い!」の一言。当たり前のことなのですが、周りにあるすべての山や景色を見下ろせる、特別な優越感に浸れます。近くにいらした方に、記念写真を撮っていただきました。ここから眺める三俣山の姿も、また格別です。

九州本土最高峰・中岳の山頂標識中岳山頂からの眺め

まるでスイスのアルプス!
天空のオアシスを見下ろす贅沢な昼食

山頂で何より感動したのは、上から見下ろした御池の姿でした。 「ここは本当に日本なのだろうか?」 そう疑ってしまうほど、コバルトブルーに輝く水面を、鮮やかな新緑とピンクのミヤマキリシマが優しく囲んでいます。その美しさは、まるでスイスのアルプスに迷い込んでしまったかのよう。まさに最高の「天空のオアシス」でした。

天空のオアシス。中岳山頂から見下ろすコバルトブルーの御池天空のオアシス。中岳山頂から見下ろすコバルトブルーの御池とミヤマキリシマ
御池を望む岩の上でのおにぎり

絶景を心ゆくまで堪能し、名残惜しいですが下山へと移ります。お昼ごはんを食べる場所に選んだのは、御池を一望できるようにせり出した大きな岩。この贅沢すぎる特等席に腰掛け、持ってきたおにぎりを頬張りました。どんな高級料理にも勝る、何よりのご馳走です。

下山時のハプニングと、
体が教えてくれた「無理のサイン」

道中、モバイルバッテリーでスマートフォンを充電しながら写真を撮っていたのですが、ここで予期せぬハプニングが。いつの間にか充電が止まっていることに気がついたのです。 その時はすっかりバッテリー本体の残量がなくなったのだと思い込んでいましたが、家に帰って確認してみたところ、どうやら充電コードの不具合が原因だったようです。

登山のコースタイムを記録しておきたかったので、ここからは少しペースを上げて急いで下山することにしました。しかし結局、途中でスマートフォンの電源が切れてしまい、正確な時間が表示されなくなってしまいました。ごめんなさい。

急ぎ足で下った帰りの道。ミヤマキリシマ咲く稜線

「時間だけでも……」と気が急いて、息が上がるほどの駆け足で下り続けました。そうして無事に登山口へ到着し、ふと自分の手を見たとき——ハッとしました。乳がんの手術をした側の手が、パンパンにむくんでしまっていたのです。 無理を重ねた体が、はっきりと「サイン」を出してくれていました。

今回の山行は、振り返れば7月の富士山に向けた「練習登山」だったように思います。そして同時に、気をつけるべき課題をたくさん見つけた山行でもありました。 夜の寒さ、そして下りで無理をした手のむくみ。「寒さには十分気をつけなさい」「もっとゆっくり、無理のないペースで行きなさい」と、山が私に大切なことを2つも教えてくれたのだと思います。この教訓は、きっと富士山で生きてくるはずです。

今回の「下山めし」:
長者原ヘルスセンターで大分名物に舌鼓

山を終えてのお楽しみ、今回の「下山めし」は「長者原ヘルスセンター」に決定です! 周辺にある食堂は営業時間が短いところが多いのですが、ここは16:00まで開いているので、遅めの下山でも本当に助かります。

食券を購入すると自動で厨房に注文が入るシステムなので、食券を持ったまま席に着き、出来上がると番号で呼ばれます。以前に久住山に登った時は「だんご汁定食」をいただいたので、今回はもう一つの大分名物「とり天定食」を注文しました。

揚げたて熱々のとり天を頬張り、温かいお味噌汁をすすると、登山の疲れが解けてホッと癒されます。窓の外には、さっきまで自分がいたくじゅう連山の美しい山並みが望めます。

長者原ヘルスセンターのとり天定食

そして食後のデザートには、テラス席へと移動してソフトクリームをいただきました。目の前に広がる雄大な絶景を眺めながら、幸せな時間を過ごしました。

テラス席から絶景を望むソフトクリーム長者原ヘルスセンターのソフトクリーム

この日に選んだ相棒

ティートンブロス チル ハーフジップ シャツ

この日の相棒は、ティートンブロスの「チル ハーフジップ シャツ」。長袖の夏用シャツで、強い日差しから肌をしっかり守ってくれるのが、夏山では何よりありがたいところです。

生地がよく風を通すので、遮るもののない日当たりの稜線でも、風がひと吹きすればスッと涼しくなります。そして何より速乾性。ザックを背負っていると背中はどうしても汗ばみますが、お昼を食べている間にはもう乾いているほどで、汗冷えの心配もありません。日差しから肌を守りつつ、風が通り抜けるたびに涼を運んでくれる——夏の登山を軽やかに支えてくれる相棒です。

このシャツの詳しいレビューはこちら→


コースタイム

YAMAPチェックポイント:中岳コース

これから中岳を目指す方の山行が素晴らしいものになりますように…

それでは、また次の山で。山のイラスト