2度目の平治岳。
「退屈な森」が「感動の森」へ。
第2の苔むす森と西側の
ピンクの海原。


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また、この季節がやってきた。 あの時の感動が、どうしても忘れられなくて。

昨年は「樹林帯がきつくて退屈だった」という記憶が強かったのだけれど、今年は不思議と、昨年よりも景色がずっと美しく見えた。 まるで「第2の苔むす森」に出会ったかのよう。 長くて退屈だったはずの森が、美しく愛おしい場所に変わる――そんな変化を感じられた山行になりました。

雨音と蛍の光、天然のホワイトノイズに包まれて

2026年6月上旬。今年もソロで平治岳を目指します。 昨年と同様、前日から宝泉寺温泉に前泊して早朝に出発するスケジュール。 お世話になったのは、宝泉寺温泉「ほたるとかじかの宿 旅館 九重」です。

お部屋は川沿いのツインルーム。トイレが少し狭く、ウォシュレットではなかったのがちょっぴり残念でしたが、露天風呂付きの温泉で心も体もゆったりと満たすことができました。

ほたるとかじかの宿 旅館 九重の客室川沿いのツインルーム

この時期、お部屋の窓からはたくさんの蛍が見えるそうなのですが、この日はあいにくの土砂降り。 それでも夜、窓から川を覗き込んでみると、雨の中でちらほらと健気に舞う蛍の姿を見ることができました。とても風情があって素敵です。 カエルの鳴き声と、川のせせらぎを天然のホワイトノイズにして、翌朝の早朝出発に備えて早めに眠りにつきました。

宝泉寺温泉 ほたるとかじかの宿 旅館 九重

ほたるとかじかの宿 旅館 九重の詳細はこちら→

小雨の男池からいざ出発

平治岳へは「男池(おいけ)駐車場」からアプローチします。 昨年の経験から、激しい“駐車場争奪戦”に遅れないよう、現地には5:30に到着。土砂降りこそ免れたものの、まだ小雨がパラついています。 天気予報を信じるなら、9時頃には雨が上がるはず。 約190台収容できる無料駐車場ですが、この日は平日で天候も良くないせいか、まだ少し余裕がありました。隣の敷地は有料駐車場になっていて、料金は1000円でした。もしもの時はこちらを利用するといいですね。 駐車場前にはトイレがあり、トイレットペーパーもたくさん準備されているのが本当にありがたいです。

男池駐車場とトイレ

車内でしばらく時間をつぶしていると、次第に日が差し始めたものの、まだ霧雨が残っていたので、ミレーのティフォン50000ストレッチジャケットを羽織り、フードを被っていよいよ出発。 登山口の入り口で環境整備協力金を支払います。早朝は料金箱が設置されているので、100円を入れるシステムです。

男池登山口環境整備協力金の料金箱

「きつい」が「美しい」に。心の余裕がくれた新緑と苔の絶景

平治岳の土質は、たとえ雨が降っていなくても黒土で滑りやすいのが特徴。 「安全第一」をモットーに、一歩一歩ゆっくりと進んでいきます。 昨年は「樹林帯が長くてきつかった…」というイメージしか残っていませんでした。あの時はきっと、景色を見る心の余裕がなかったのかもしれません。

瑞々しい新緑と、しっとりとした苔の美しさ。 それはまさに「第2の苔むす森」と叫びたくなるほどの絶景でした。 退屈だったはずの樹林帯が、こんなにも深い感動に変わったのは、私自身の心に余裕ができたからでしょうか。

しっとりとした苔の森瑞々しい新緑

ただ、足元は昨年以上に泥だらけで歩きにくく、うねるように根っこが連なる道は相変わらず。 さらに、せり出した木や枝が多いので、頭上にもしっかり注意を払う必要があります。

うねるように連なる根っこの道泥だらけの登山道
コガクウツギの白い花

根っこと泥、そして岩場が続く道を淡々と歩いていると、コガクウツギの花が出迎えてくれました。新緑の鮮やかな緑と、可憐な白のコントラストがとても綺麗です。

少し歩くと「かくし水」と書かれた木の板を見つけました。水場ですね。ひっそりと隠れた場所にあるため、注意してみていないと登山者が見落としてしまうからだそうで、昨年はこの名の通り、私も見落としてしまったようです。

かくし水の水場「かくし水」と書かれた木の板

幸運の鳥を探しながら、長く蒸し暑い試練の道をゆく

「ソババッケ」に到着。 昨年出会えなかった“幸運の鳥”を期待して、少し足を止めて周囲を眺めてみましたが、残念ながら今年も出会うことはできませんでした。

ソババッケの湿地帯
岩場が続く登山道

ここからは、いよいよ岩場が続く一番つらい道のりに入ります。

途中、道端に座り込んでいる女性を見かけました。どうやら脱水症状を起こしてしまったようで、隣で男性が看病をしています。気温自体はさほど高くないものの、湿気が多くてかなりの蒸し暑さ。私もこまめな水分補給を意識しながら、一歩ずつ登っていきます。

それにしても、この岩場は本当に長い。 前を歩いていた方が、下りてくる登山者に「大戸越(うとんごし)はまだまだですか?」と声をかけていました。私も全く同じ心境だったので、「もう少しですよ!」という返答を聞いて、元気が湧いてきます。 お腹の虫もグーグーと鳴き始めました……あと少し。

目の前に飛び込んできたピンクの絨毯と、ご褒美ランチ

やがて、頭上が明るくなってきました。 視界が開けた瞬間、右側に鮮やかなピンクの絨毯が飛び込んできて、今年も思わず「わぁ……!」と声が漏れてしまいました。

大戸越に広がるミヤマキリシマのピンクの絨毯
ミヤマキリシマと三俣山

頂上にアタックする前に、まずは腹ごしらえ。 私の大好きな三俣山を特等席から眺めながら食べるご飯は、美味しさが何倍にも膨らみます。 ただ、横目で「まだあの急登を登るんだよなぁ……」なんて思ったりもして。

三俣山を眺めながらのランチ
雲がかかる三俣山

頂上はまだ先。
息を切らした私を迎えてくれた斜面の絶景

すっかり天気も良くなり、ここからは眩しい日差しの下、急な山道を登っていきます。 ここは「上り専用」の登山道から登るのがルールです。 段差がかなり大きいため、場所によってはストックがかえって邪魔に感じられることも。 昨年は土曜日だったこともあって大渋滞が起き、かなりの時間を費やしたのですが、今年は人は多いものの自分のペースでスムーズに登ることができました。

息を切らしながら登り詰めると、道の途中でこの絶景と再会できました。 眼前に広がる優美なミヤマキリシマの斜面、その向こうにそびえる三俣山、そして優しく広がる坊ガツル。この息をのむようなパノラマを楽しみながら、さらに先へと進みます。

ミヤマキリシマの斜面と三俣山、坊ガツルのパノラマ

一歩足を踏み入れれば、そこはミヤマキリシマが咲き誇るピンクの別世界

山頂に到着すると、女性の登山者のお二人が声をかけてくださり、記念写真を撮ってくれました。

平治岳山頂での記念写真

今年は、昨年行くことができなかった「西側」エリアへと足を延ばしてみることに。 どこまでも続くようなミヤマキリシマの花畑の中を歩いていきます。

西側エリアのミヤマキリシマの花畑どこまでも続くミヤマキリシマ

たどり着いたその場所には、斜面をミヤマキリシマがなだれ落ちるように咲くダイナミックな景色が広がっていました。 「あぁ、この景色を見るために、今日ここまで登ってきたんだ」 心からそう思えるほどの圧倒的な美しさです。

斜面をなだれ落ちるように咲くミヤマキリシマ
西側に広がるミヤマキリシマの海原

西側の端からは、まるで手が届きそうなほど間近に三俣山が見えていたのですが、あっという間に雲に覆われてしまい、写真に残せなかったことだけが少し心残りです。

油断大敵の黒土を無事に抜けて。
生命力の巨木と名水に癒やされる

名残惜しいですが、下山へ。 美しいミヤマキリシマと三俣山を何度も眺めながら大戸越まで戻り、そこで少し休憩を挟んだ後、後ろ髪を引かれる思いで山頂をあとにしました。

ここからは、特に足元への集中力が必要です。 登りよりも下山のほうが圧倒的に滑りやすく、足も疲労が溜まっているため、気を抜かずに慎重に足を運びます。その甲斐あって、一度も転ぶことなく無事に下山することができました。

男池湧水群のすぐ近くには、男池のシンボルである2本の巨木が佇んでいます。どちらも生命力の強さに圧倒されますね。

オヒョウの巨木
オヒョウの巨木
カツラの巨木
カツラの巨木

帰りがけには、名水百選にも選ばれている「男池湧水群」でお水を汲みました。 ご覧の通り抜群の透明度を誇り、水温は年間を通してほぼ一定なのだそう。夏は冷たく、冬はじんわり温かく感じられます。 柄杓(ひしゃく)と漏斗(じょうご)が用意されているので、飲み干したペットボトルに詰めて、お土産として持ち帰ることができますよ。

男池湧水群の柄杓と漏斗抜群の透明度を誇る男池湧水群

張り詰めた心がほどける珈琲

下山後は、駐車場横の「黒岳珈琲」でアイスコーヒーをいただきました。 男池の湧水を使って淹れられたスペシャリティコーヒーです。 店内にはジャズを中心としたレコードが飾られていて、温かみのあるサウンドが空間を包み込んでいました。 足元が悪い道を歩き通したせいか、ずっと張り詰めていた緊張の糸が、コクのある冷たさと、心地よい音色に包まれて、一気にほどけていくのを感じました。

黒岳珈琲のアイスコーヒージャズのレコードが飾られた店内

下山めし

くじゅうの帰り道によく立ち寄る、お気に入りの「春日うどん」へ。 今回は「豊後豚丼 うどん御膳」をいただきました。 豊後豚は甘くて柔らか。お店自慢の手打ちうどんはモチモチとした食感がたまりません。さらにセットの手作り豆腐も絶品です。 山を歩き抜いた後のご飯って、どうしてこんなに美味しいんでしょうね。

春日うどんの豊後豚丼 うどん御膳

思い返せば昨年、「もしミヤマキリシマが咲いていなかったら、もう平治岳には登らないなぁ」なんて友人に話した記憶があります。 けれど、今年は全く違う感想を抱いていました。

その時の自分の心のあり方ひとつで、目の前の景色はガラリと変わる。森はきっとこちらの心を写しているのだと。 それを見つけられるのもまた、登山のおもしろさなのかもしれません。

苔むす森

この日に選んだ相棒

MYSTERY RANCH クーリー30

平治岳の樹林帯は、露出した木の根や、せり出した低木で足場が悪く、バランスを取りながら歩くのが意外と難しい道のり。そんなときに頼りになったのが「MYSTERY RANCH クーリー30」です。

背中にぴたりと吸い付くようにフィットするので、不安定な足元でも荷物に振られず、体の軸がぶれません。長時間の山行でも疲れにくく、最後まで安心して歩くことができました。

足元の不安を相棒に預けられるから、心は目の前のミヤマキリシマへ。体に馴染んだ道具は、いつしか「装備」ではなく「相棒」になる。信頼できる道具は、景色をもっと深く味わわせてくれます。

このギアの詳しいレビューはこちら→

コースタイム

YAMAPチェックポイント:平治岳コース

これから平治岳を目指す方の山行が素晴らしいものになりますように…

それでは、また次の山で。山のイラスト